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食べることに理解がある病院・施設がないなら自分でやるしかない - 口から食べる幸せを守る家族会
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食べることに理解がある病院・施設がないなら自分でやるしかない

やっとの思いで入った回復期病院は最初から父を食べられないと決めつけていました。食べることに理解のある施設はほとんどないのが現実。ならば自分でやるしかない。

11週間続いた絶食

父は2月に脳梗塞を発症、重度の左麻痺が残り寝たきりで要介護5。言葉もほとんど発しませんでした。急性期病院では療養病院を勧められましたが回復期病院に行かせてほしいと懇願し、回復期病院に行くため栄養経路を中心静脈栄養から経鼻経管栄養に切り替えました。苦労の末、名古屋でも有数の回復期リハビリテーション病棟のS病院に入院できました。

中心静脈栄養と経鼻経管栄養、食べることにつながるのはどちら?

  • 病歴(入院時)
    心原性脳塞栓症、右中大脳動脈領域の広範な梗塞、右中大脳動脈の起始部梗塞、一過性心房細動、慢性心不全、心拡大、左完全片麻痺、左上肢拘縮、覚醒不良、構音障害で発語わずか、右目閉眼、尿路感染症、左半側空間無視、顔面麻痺による表情硬直、左口角下垂による流涎、痰吸引1日5回未満、記憶障害、病識自覚なし、せん妄、幻視、上顎総義歯、下顎4歯残存局部床義歯、発症より義歯不使用、経鼻経管栄養、留置カテーテル、脳血管性認知症状あり
  • 既往歴
    痛風、難聴

白くさんぜんと輝く立派な建物、最先端のリハビリ機器が並ぶ姿、毎日3時間もあるリハビリ。食べる訓練がいよいよ始まるぞと期待に胸膨らませていました。ネットで得られる情報や論文では早期の経口摂取訓練で食べる力を取り戻すと麻痺の改善や日常生活動作の拡大につながった例がいくつもあったからです。しかしながら、食べる訓練は一向に行われませんでした。

言語聴覚士による訓練は毎日1時間程かけて行われました。最初は父をゴロゴロ転がしたり、マッサージや足の屈伸運動を行いました。父は脳梗塞の影響で足を10回程屈伸させるとすぐに眠りに落ちます。急性期病院では寝付けない時に寝かせる目的で足の屈伸を行っていたほど効果抜群でした。

言語聴覚士は運動で十分に眠らせた後で「起きて!食べる訓練をします!」と呼びかけます。父の傾眠の症状については事前に説明しています。食べる訓練のために運動は後にするか減らしてもらえないかとも頼みました。それでも行うからには何か効果があるのだろうと見守っていました。

「口から食べる幸せをサポートする包括的スキル」との出会い

なぜ食べる訓練が始まらないのか、リハビリの効果がなくなると言われる回復期6か月の壁はどんどん迫ってくる。毎日必死に解決方法を探る中、NHKプロフェッショナル仕事の流儀「食べる喜びを、あきらめない」で小山先生を知りました。食べさせることに果敢に挑む姿、脳梗塞患者の驚きのビフォアフター。すぐさま名前を検索、著書の「口から食べる幸せをサポートする包括的スキル」を購入しました。

医療従事者でなくても患者の状態を判断できるKTバランスチャート、詳細に渡る食事介助技術は合理的でこれを正しく実践できれば父は再び食べる力を取り戻すことができるはずと読みながら涙がこぼれてきました。状態や症状別、ステップアップの仕方、家族でもできる方法など事細かに書かれていたのですぐに兄、妹にも本を買わせ、まずは「離床」から始めました。できるだけ車椅子に座らせ外の空気にあたらせました。

食べることでどんどん良くなる

無為に過ぎていく時間と食べる訓練の変わらぬ現状に耐えかね、病院内の地域連携室のソーシャルワーカーに「食べる訓練の前の運動を最小限にしてもらえないか」と文書で訴えました。
訓練前の運動をやめたところ、予想通り覚醒を維持できるようになり、ようやく本当の食べる訓練が始まりました。入院から4週間後のことでした。

食べる訓練はベッド上で頸部角度30°の状態から始まりました。言語聴覚士の介助で摂食訓練用ゼリーを食べます。一見、寝たまま食べるのは食べにくそうに見えますが、30°にすると食べ物が喉を通過するとき気管よりも先に食道に落ちるため、誤嚥しにくい安全な角度と言われています。

開始から10日後、ゼリーからペースト食の「なめらかおかず(キユーピー)」2品とミキサー粥に移行しました。絶食後始めて食べる固形物。五感と内臓が刺激されたのか口から食べるごとに言葉を発するようになり、顔面神経麻痺で硬直していた顔に表情が戻ってきました。言われていたようにまさに「食べることでどんどん良くなる」を目の当たりにしました。

これでどんどん良くなっていくものと期待していましたが、まさかこの状態が3か月半も続きステップアップがまったく行われないとはこの時思いもよりませんでした。

一度も問診したことがない医師が胃ろうを勧める

主治医、言語聴覚士、看護師長、ソーシャルワーカーとの面談で「胃ろうを検討してください」と言われました。
「父は健康状態、口内環境も良く、食べる意欲は非常に強い。誤嚥性肺炎も起こしていない。良い面を評価してもっと食べる訓練を行ってもらえませんか」と訴えましたが、聞き入れられませんでした。

以下は面談時のやり取りです。

「胃ろうは他所でやってくれるところなんかないよ?」

―― 意味がわからなかったので聞いてみると胃ろうにせずこの病院を出た場合、胃ろうにしてくれる病院はないという意味。

「(リハビリの効果に関して)こういう人はもう良くなるとかはない。現状維持がせいぜい。」

―― 「どういった基準でそのように判断するのか教えてください。」

「写真を見ればわかる。脳の大部分がやられている。たくさんの人を見て来たから写真を見ればこの人がどこまで回復するとかしないとかわかる。」

―― つまり入院する前から口から食べさせるなどとは一切考えていなかったということ。写真だけ見て判断。絶食期間が長く続いたのも、嚥下造影検査前に言語聴覚士から家族に食事介助を指導すると言われたのもこのため。

「この人(父)は口から食べられるようにはならない。それはもうわかっている。経鼻外して、胃ろうつけないで、 ゆっくり時間をかけて口から食べさせても良いですよ。問題は誰がそれをやるかということです。誰もできないでしょ。」

主治医は父を一度も問診したことがありません。患者に話しかけない医師に初めて出会いました。父が主治医に話しかけた時は何も言わずきびすを返して去っていきました。脳血管性認知症患者と話すことは無意味なのでしょうか。話かけた途中で主治医が去ったのを見て父は黙り込みましたが、人として扱われていないようで悲しくなりました。

「口から食べる幸せを守る会」に最後の望みをかける

医師や医療方法に対する疑心と不信が積み重なる中、口から食べる幸せを守る会に最後の望みをかけることにしました。
「今、胃ろうにすべきか否か」、「食べることに理解がある施設はないのか」、この2つを会に相談して今後の進むべき道を決めようと思うに至りました。

苦悩の中で出会った口から食べる幸せを守る会

会の一瀬先生からすぐに回答をいただきました。車椅子の父を外に連れ出している時でした。温かく思いやりのあふれるメールに涙がこぼれました。同時に、かすかな望みだった食べることに理解がある施設はほぼないことを知り、膝を屈して絶望感であふれる涙をこらえました。

言語聴覚士など専門の職種がいても、食べる支援が進まないのが今の医療の現状です。同じ医療者として申し訳なく思います。

食べる訓練のためには、経鼻胃管ではない方が良いですが、経口摂取の訓練をしなければ意味がありません。病院での訓練は全く進んでいない様ですが、郁太様が記録していただいたチャートからは口や喉の機能は改善傾向にありますし、誤嚥性肺炎の既往はなく、本人の食べたい意欲もあり、積極的な訓練を行うべきと思います。

ただ、現状の病院では食べる支援の協力は得られないように思いますし、退院への期間が限られておりますので、次の施設へのためにというようであれば、胃ろうも選択のひとつと思います。

実際、老健の様な介護福祉施設で積極的に食べる支援をしているところは少なく、申し訳ありませんが、私も思い当たる施設がありません。問い合わせる際に、現状を伝え、リハビリに協力してくれるところを探すことになってしまうと思います。

言語聴覚士がおり、積極的にリハビリする施設であれば、非常に良いですが、場合によっては言語聴覚士がいる施設は、食べるリハビリが言語聴覚士任せになってしまい、言語聴覚士も責任をひとりで背負うかたちになり、攻めのリハビリは行いにくい環境になっていることがあります。

食べる支援は言語聴覚士がいなければできないわけではありませんし、私の経験上、看護師や介護職が協力的な施設の方が、食べる支援だけでなく、その人の食べるを含めた生活をサポートしてくれるように思います。

食べるための支援として、スタッフの協力だけでなく、食事形態の選択肢が多いところも重要かと思います。嚥下に配慮された食事(えんげ食やソフト食と呼ばれ、ミキサー食をゲル化剤で固め飲み込みやすくした食事)を提供している施設は嚥下に力を入れている可能性はあります。現在ミキサー食のようですが、ミキサー食からステップアップするにも、食事形態が多い方がステップアップしやすいです。

嚥下を積極的に行なってくれる訪問歯科やドクターも心当たりがなく、申し訳ありません。食べる支援に理解のある施設で、許可が得られれば、家族様による支援が一番良いと思います。病院や施設の協力が得られれば、私が同行させていただくことも可能です。

保険での診療は半径16kmとなっておりますので、保険での診療はできないかたちになりますが、私にできることであれば協力させていただきたいと思います。

あい訪問歯科クリニック
歯科医師 一瀬浩隆

引用:一瀬先生からの回答

一瀬先生の回答に勇気付けられ、2つの決意をしました。
「胃ろうにする」、「食べることに理解がある病院・施設がないなら自分でやるしかない」

一瀬先生の助言を得て、家族が摂食訓練を行える施設を次の条件で探すことにしました(の数が多いほど重要)。

  • 家族による摂食可 ★★★
    「口から食べる幸せをサポートする包括的スキル」の手法を実施するためです。家族による摂食訓練を認めているところは確認した老健21件(見学10件、電話のみ11件)中、3件でした。医師と言語聴覚士の許可が下りれば可というところが数件ありました。特養も6件見学しましたが、医師、言語聴覚士が常駐しておらず、終の棲家でもある特養の特性上、家族による摂食を認めているところは半数程ありました。
  • 家族が通いやすい、知人が見舞いに来やすい立地 ★★★
    家族による摂食訓練を毎日行うためと知人に頻繁に会うことで社会性を取り戻すためです。
  • 個室 ★★★
    注意障害があり、音や動くものに気を取られ訓練の妨げとなるため個室が必須でした。S病院に入院当初、被害妄想患者の延々と続く悲痛な叫びと罵詈雑言が寝たきりの父に伝染し、認知状態が悪化したため個室に移した経緯がありました。
  • 胃ろう可 ★★★
    胃ろう、要介護5、男性の場合、介護負担が重くなります。看護師の人員不足が理由で断られることがしばしばありました。
  • 経管栄養中は車椅子可 ★★★
    離床するためです。経管栄養はベッド上30°か車椅子90°のどちらかです。逆流性食道炎や肺炎などのリスクのため、栄養開始30分前、栄養中2時間、栄養終了30分後の約3時間はベッド⇔車椅子を移動できません。ベッド上で栄養が1日3回なら1日9時間ベッドに釘付けです。S病院では家族がいる時だけでもよいので車椅子での経管栄養をお願いしましたが最後まで許可されませんでした。
  • 改訂水飲みテストで嚥下を都度評価 ★★★
    老健入所中に嚥下造影検査は受けられません。嚥下内視鏡検査は外部の歯科医師を呼ぶため実施までに時間がかかり、その間に絶食となる可能性があります。以下の記事を読んで改訂水飲みテストを施設内で行っていれば嚥下を都度評価できるノウハウを持ち、食べることに理解のある施設の可能性があると考えました。

    長期間食べていない人に、「座れるから、歩いているから」といって、即座に座位で水飲みテストやフードテストを開始するのは危険です。水飲みテストも当然、改訂水飲みテスト(3ml)をしますが、最初から3mlでは危険ですので、まずは、口腔内を湿潤させたら、1ml、2mlと増やしていきます。

    座位(普通に座った状態)で評価をすることや、顎が上がった状態、当然腕が下がった状態も危険です(口から食べる幸せをサポートする包括的スキルp58-59参照)。それで大丈夫であれば角度を45度、60度とあげていきます。この原理原則を守ることが大事です。

    長期に食べていない人は、口を閉じる力や舌を動かす力、喉ぼとけを上げる力が衰えていますので、重力の力を借りて口から喉そして食道を通してあげることが必要だからです。

    引用:家族会メーリングリスト内の小山先生の発言

  • 医師である施設長の経歴 ★★
    医療組織の身分制度で最上位の医師にすべての決定権があります。食べることに理解のない医師であれば職員もまた医師の指示通りに行動します。S病院の主治医は父を一度も問診することはなく、最初からできないと決めつけ、ステップアップをしませんでした。こうした経緯から医師である施設長の経歴、論文、発言などを調べました。食べることに理解があるかどうか少しでもわかるかもしれないと考えました。多くを知ることはできませんでしたが、無意味ではありませんでした。老健の施設長は病院で定年まで勤め上げた方に用意された椅子であること、またS病院の主治医の前歴は大病院で名のある方ということがわかりました。
  • 言語聴覚士はいない方が良い
    3つの病院で父の担当だった5人の言語聴覚士の中には親身な方もいらっしゃいましたが、残念ながら食べさせる専門家とは思えませんでした。

    そう思うに至った理由
    • 車椅子(座位90°)でとろみ茶を口に次々と詰め込み、飲み込めずダラダラと口からこぼしてもなお詰め込む方。摂食訓練は最初はベッド上30°で始めるのが適切だと思われます。
    • 「僕、(父への食事介助が)初めてで(誤嚥性肺炎が)怖いんでやめときますね」と言った方。専門家とは思えない発言に驚きました。
    • 嚥下造影検査で60°で嚥下に問題なしという結果が出たにもかかわらず、3か月半ベッド上30°のままで食事介助を続ける方。食事介助スキルがなく、ステップアップを試みず、安全な30°を続けるだけでした。
    • 見学先で「摂食訓練は3年ぐらいかけてゆっくりやるものですよ」と言った方。食べられるようになる前にお迎えが来そうです。
  • 嚥下に配慮された食事を提供
    嚥下食、ソフト食など食事形態の選択肢が多いところは食べることに理解があり、食べさせるノウハウを持っている可能性があります。この条件を満たす施設は1件のみでした。

KTSM実技講習に参加

8月の平塚で行われるKTSM実技講習に申し込もうとしましたが、既に申込みはいっぱい、また受講条件が医療職に限られているように見えました。そこで見学とメモを取るだけでも良いので参加させてもらえませんかと直接お願いするためと施設の情報収集が目的で、7月の横浜の全国大会に参加を申し込みました。受講の許可を知らせるメールが届いた時はガッツポーズで喜びました。

S病院の言語聴覚士から食事介助の訓練を受けていましたが、KTSM実技セミナーを受講してこれはまったく別次元だと感じました。やるべきことがなされていない現状を改めれば父は食べられるようになると確信しました。

家族会からは5名が参加していました。各家族ごとの状況に合わせた摂食方法をご指導いただき、一言も聞き逃すまいとメモを取り、脳内で何度も反復して記憶しました。父はベッド上でしか摂食していなかったのですが、2名の方がベッドより進んだ車椅子での摂食だったので、ステップアップした次の段階を明確にイメージすることができました。

受講の4日後に父はS病院を退院し、地元の施設へ移転しました。
家族による摂食訓練が始まりました。

病院で見離された胃ろうの父が3週間で自力摂取できるようになる

Dakhla

家族会役員

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