脳梗塞である日突然、食べられなくなる
父は2月に発症した脳梗塞により、ある日突然、飲み込みができなくなりました。口から食べることができない以上、口以外から栄養を入れなければ餓死してしまいます。
緊急時に口以外から栄養を入れることは当然です。しかし、緊急時が過ぎ去っても口から食べさせなかったり、正しい訓練や評価をしないことに大きな問題があり、それに苦しめられてきました。
リハビリを集中的に行う回復期病棟のS病院(名古屋)で父を腹に穴を開けて栄養を入れる胃ろうにしました。悩んだ末の苦渋の決断でした。
胃ろうにしなければ、十分な摂食訓練も評価もされず、胃ろうが摂食訓練をステップアップさせる唯一の選択肢でした。
KTSM実技セミナーを受講、食べられるようになると確信
S病院では、毎日1時間、言語聴覚士による摂食訓練を行っていました。
食事はどろどろのペースト食で、自力でスプーンを使って口に運ぶ自力経口摂取ではなく言語聴覚士に食べさせてもらう全介助でした。
食事姿勢はベッド上でリクライニング30°(頸部角度約30°、ベッド角度約23°)で退院するまで4ヶ月弱ずっとこの姿勢でした。30~40分かけ、3~4割ほど食べたところで父が眠くなって、訓練終了が常でした。
7/13に飲み込みの力を見る嚥下造影検査ではリクライニング60°で誤嚥なしと評価され、一時的に45°まで上がったものの、すぐに30°に戻されました。毎週病室を訪れるたび、ステップアップどころかステップダウンしている摂食訓練に気が滅入り、「現状維持がせいぜい」という主治医の言葉が正しいのかもと思うこともありました。
S病院の言語聴覚士から食介助の指導を受けていましたが、8/25のKTSM実技セミナーを受講し、この技術はまったく別次元だと感じました。やるべきことがなされていない現状を改めれば父は食べられるようになると確信しました。
3週間で自力経口摂取できるようになる
8/29にS病院を退院、入所した老健で家族による食事介助を始めました。
「口から食べる幸せをサポートする包括的スキル」をバイブルにし、困った時は何度も読み返し、回答を見つけ実践しています。
医療知識のない素人が、父を人体実験しているようで不安に苛まれながらも、回答通りに実践すると、次々に改善されていきます。小山先生が積み重ねられた経験と理論の正しさを身をもって実感しています。
家族による食事介助を初めてわずか3週間で大きく前進しました。ベッド上30°からリクライニング車椅子角度70°へ、全介助から自力経口摂取で摂食量6割にまでステップアップしました。
医師や言語聴覚士よりも「口から食べる幸せをサポートする包括的スキル」が正しかった
私達家族が何につまずき、どう解決したか記録を残すことで、同じ苦しみを味わっている方の少しでもお役に立てれば思い、経緯と一緒に投稿していきます。
環境と病状はそれぞれ異なるので、家族による食事介助を決して推奨するものではありません。私達にはこれしかなかったのです。
KTSM実技認定者が近くにいれば依頼するのが最も良い方法です。
伝えたいのは私がこれまで会った医師や言語聴覚士よりも「口から食べる幸せをサポートする包括的スキル」が正しかったということです。私達は本に書かれてある通りに従って実践しているだけです。
KTSM実技セミナーを一度受講しただけで特別なスキルがあるわけではありません。単にS病院の医師と言語聴覚士が父の飲み込む力を正しく評価していなかったのでしょう。
父のように嚥下能力を正しく評価されず、食べることを諦めさせられている人がごまんといると思うと恐ろしい限りです。
訪問歯科衛生士です。
もう少し具体的に
どうステップアップしていかれたのか教えていただけますか?
リハビリはどんなことをしたのでしょうか。
教えていただけると助かります。
病院での治療は医師の判断の元に行われ、プロトコルに沿って嚥下検査の機能に対する診断に沿って直接嚥下訓練か、間接嚥下訓練がなされることが多いです。自分はPTのため嚥下の訓練を行うことがないですが、歩けるようになりそうな患者さんが食事が出来ずに弱っていくのを見守ることしかできず悔しい気持ちになることが多いです。STさんの判断が間違っていることはほとんどないですし、病院はリスク回避が第一、医師の判断が第一のため、勝手なことはできません。食事希望に対してご家族が協力してやってくださるなら私達も色々と指導などできますが、病院のシステム上リハビリの時間は長くとれず食事ができないまま看取りとなることが多いように思います。何が言いたいか分かりにくいですが、誤嚥=諦めた方がいい という風潮 リハビリ時間は長くとれない という風潮が病院の中では強く、それらの改善とリスク回避よりも食事をとる方向へ医療全体が向かないことには中々難しいことのように思います。色んなご家族がこのような思いを抱えていることは容易に想像でき、医療システムに対して声をあげてくれる人が増えれば更に良い社会が築けるのではと思いました。経験談ありがとうございました。
経験上、嚥下が悪い段階で中心静脈を選んだ時点で看取り方向になることが多いです。経管栄養及び胃瘻作成し存分にリハビリできるようになり、身体機能がある程度回復した人が嚥下機能も回復してくるように思います。